「常葉橘・庄司隼人投手」との5年半を東海地区担当PCユキオが振り返ったレポート vol.5

「渡米」

20日間におよんだ甲子園で充実した日々を過ごし、新たな武器(高速スライダー)を手に帰静しました。また、一生、心に残るであろう経験・体験をしたことで新たな可能性が広がり、深化し続けるために追及するべき課題が見つかったのも大きな収穫でした。

中京大中京高校の優勝が決まった決勝戦後、庄司投手のもとに思わぬうれしい知らせが届きました。明豊戦の活躍が評価され、全日本高校選抜に選出されたのです。「更に高いレベルで野球ができる!」胸が躍り、闘争心が掻き立てられました。

JAPANのメンバーとして渡米

渡米前の練習ではJAPANチームメイトの顔ぶれを見て「このメンバーの中でNo.1になってやる」と何苦楚魂が湧き上がってきたそうです。甲子園優勝投手、準優勝投手の間で投げたブルペンでは、ストレートと高速スライダーが唸りを上げて捕手のミットへ吸い込まれていきます。乾いた音が鳴り響くと体はさらに躍動します。バッティングゲージでは甲子園で打率5割を記録した打者とのホームラン競争を楽しんだといいます。

いざアメリカへ

渡米後はエンゼル・スタジアムでの練習。ドジャー・スタジアムでのメジャーリーグ観戦。ドジャー・スタジアムでは憧れの黒田投手との対面を果たしました。実は庄司投手、甲子園期間中に黒田投手のナイスピッチングを集めたDVDを見ていました。そこに映っていたのはストレートの軌道でストラクゾーンに投げ込み、打者の手元でボールゾーンへ動かすノーストライクピッチング。

庄司投手が甲子園で覚えた魔球・高速スライダーと同じ性質の球を黒田投手は内へ外へ下へ斜めへと様々な方向に操作していきます。それに加え150Km/h超えのストレートが高めに伸びていくのです。

「プロで勝てる(しかも最多勝、最優秀防御率を獲得する)投手の投球術とはこういうものか」と勉強させていただきました。「いずれはここで野球をやりたい。」この対面で黒田投手が握手をしてくださった時、メジャーへの憧れが芽生えたそうです。

HAYATO who evolves(深化する隼人)

第1戦 Hayato Shouji デビュー1勝敵味方関係なく純粋にプレーを評価する目の肥えたベースボールファンやメジャーのスカウトが見守る中で行われた第一戦。JAPAN1点リードの8回、庄司投手は残り2イニングをクローザーとして任されました。

8回には味方のミスから同点に追いつかれましたが、9回には最後の打者を93マイル(149km/h)のストレートと高速スライダーで仕留めます。その裏、味方打線が爆発し勝利投手になりました。 堅いマウンドで苦戦しつつMAXを2km/h更新、そして何よりも高速スライダーが有効でアメリカ打線を翻弄できたそうです。深化の隼人、アメリカでも輝きます。

引分になった第2戦は試合途中から遊撃手で出場。守備機会3回を無難に捌きます。

1勝1分で迎えた第3戦。必勝体制で挑むJAPANは庄司投手を6番中堅手で起用します。初めて守る中堅手でノックなし・・・不安の中、監督から「お前ならできるだろ」その一言で火が点きました。なんと右中間への飛球をダイビングキャッチ。アメリカでも魅せる野球を実現させます。その後、自らの落球で出塁を許すも、次打者のヒットで3塁を狙う走者をレーザービームで射してしまいました。またもスタンドが沸き上がります。「お前、わざと落として見せ場を作ったな(笑)」by監督

打撃ではショートゴロエラー、レフト線2塁打、セカンドフライ、ファーストゴロ、ライト線2塁打の5打数2安打。2打席目のレフト線2塁打はAゾーン5角形で“逆方向へ引っ張った”強い打球。そして、味方打線が凡打三振を繰り返す中で迎えた5打席目。マウンドにはメジャーも注目する身長2mの100マイル左腕が立っています。

“アイツ”とやって以来のワクワクする勝負。結果はインハイのファストボールを(155km/h以上は出ていた)高速スピンでライト線へ引っ張った2塁打。渾身の一打がアメリカの空気を切り裂きました。悔しがる投手を見て“してやったり”の表情。

相手のレベルが上がれば上がるほど力を出す勝負師。野手としても非凡な才能を持ち、投手―遊撃手―中堅手とJAPANのセンターラインをこなすマルチプレーヤー庄司隼人は超高校級の選手が集まったJAPANでメジャーの卵達と勝負し、さらに覚醒。様々な刺激を受け帰国しました。

9月19日プロ志望届提出。

10月29日運命の日を待つ。

庄司隼人選手