延長戦となった準決勝では、11回、自らが先頭打者となり「ホームランを狙っていた」というフルスウィング。打球はライトの前へ。フルスウィングを見た右翼手が一瞬後ろに下がりポテンヒット。その後、彼自身がサヨナラのホームを踏み、甲子園まであと一勝と迫ります。
勝つ「コツ」を掴んだ後の決勝では、終盤になると抑えていた球速を一気に開放し、145km/h超え連発の6安打完封。打っては狙って2本塁打。多くの投手が控えるヘッドスライディングも当たり前。 「投げて・打って・走る」勝負師・庄司の目指す「魅せる野球」が実現し、球場全体がその姿に釘付けでした。
今日の高校野球では2枚看板でなければ甲子園は不可能と言われ続ける中、完投能力と男気を備えた一人の侍“駿河の隼”は静岡県大会をほぼ一人で投げ抜き、常葉橘高校を初の甲子園へと導いたのです。
「いよいよ甲子園」
一番対戦したい“アイツ”がやってくる。『雑誌・野球小僧 6月号』で流しのブルペンキャッチャー・安倍さんに注目選手として庄司投手が取り上げられました。そのとき同時にもう一人、安部さんが注目したのが九州のプロ注目選手だった“アイツ”だったのです。
静岡県大会の段階から庄司投手が「勝負したい」と望んでいた“アイツ”です。この甲子園で対戦できるのか!?期待に胸を膨らませ甲子園練習を見学していると“アイツ”がいた。軽々とフェンス越えを放つ“アイツ”が!!フツフツと沸き上がっていく闘志。「絶対に勝負する!!」
組合せ抽選の結果、お互いに勝ち進めば3回戦でと当たることになりました。しかし、道のりは険しい・・甲子園初出場の常葉橘が1勝を挙げるのも奇跡に近い、と私は思っていました。しかも、1回戦は経験豊富な旭川大高が相手。左腕エースは北海道大会で88奪三振・奪三振13.20という驚異的な数字を残した好投手です。
予想通りの投手戦になった1回戦、不安と期待の入り混じった庄司投手の甲子園第一球はスライダー。投球後「ボーク」を宣告されました。
2段モーションです。庄司投手は一瞬何が起こったかわからず「頭が真っ白になった」と振り返ります。ただ、そこはさすが庄司投手。県大会からゲーム中に投球モーションを微調整してきた男です。マウンドを降り頭の中をリセットしました。セットでクイックにしようかワインドアップに変えようか、頭の中で整理していたそうです。答えは「投げながら見つける。」
ところが、投球リズムに狂いが生じ球威は明らかに落ちていました。なんとか【かませ】られないか!?